Pinterest広告の始め方|検索前の購買意欲を拾うピン設計と商品連携

Pinterest広告を検討するとき、多くの企業は他のSNS広告と同じ物差しで考えます。ターゲティングを設定し、クリエイティブを入稿し、クリック単価とコンバージョン単価で評価する。この進め方で始めると、たいていは「数字が合わない」という結論に落ち着きます。
原因は媒体の性質にあります。Pinterestは2022年6月1日の日本向け発表で、同社プラットフォームにおける検索の97%が非ブランド指名検索であると公表しています。つまり、利用者の多くは買う商品もブランドも決めていません。決めていない人に向けて、決めた人向けの指標で評価すれば、噛み合わないのは当然です。
この記事では、Pinterest広告を「比較検討の前にある需要を拾う面」として扱う前提で、他媒体との役割分担、向く企業と向かない企業の線引き、商品カタログ連携、そして保存と再訪を織り込んだ指標の設計までを整理します。フォーマット一覧の説明ではなく、使うかどうかを決めるための判断材料をまとめた内容です。
この記事の要点
- Pinterest上の検索の97%は非ブランド指名検索で、ブランドを決めていない層が中心です
- 日本での広告提供は2022年6月に開始され、国内の月間利用者数は約870万人と公表されています
- 刈り取り用の面ではなく、比較検討に入る前の需要を拾う面として設計します
- クリック直後のコンバージョンだけで評価すると、保存や再訪を経由した成果を取りこぼします
- 減量関連や政治キャンペーンなど、広告ポリシーで扱えない領域があるため事前確認が必要です
Pinterest広告は検討前の需要に触れる配信面
Pinterest広告とは、画像や動画を「ピン」として配信し、利用者がアイデアを探している最中に接触する広告です。フィードや検索結果、関連ピンの並びに自然な形で表示されるため、広告と気づかれにくい点が特徴とされています。運用の枠組み自体は他のSNS広告と大きく変わりません。
違いが出るのは、接触する相手の状態です。Pinterestは、利用者の多くが購入する商品やブランドを決めていない購買検討の初期段階にあり、ショッピングのアイデアを積極的に探す目的でプラットフォームを活用していると説明しています。すでに買うものが決まっている人ではなく、これから決める人に触れる面だと理解しておく必要があります。
この性質は、広告が受け入れられやすいことにもつながります。Pinterest側は、数十億のピンのデータをもとに利用者個々の好みや価値観に合わせて最適なタイミングで表示されるため、購入検討に役立つアイデアとして歓迎されるとしています。売り込みではなく提案として届く面である、という位置づけです。
ECの導線全体を設計している段階であれば、投稿から購入までの流れを整理した考え方とあわせて読むと、Pinterestをどこに置くかが見えやすくなります。
広告と気づかれにくいことの意味
広告色が薄いことは、クリック率の高さにつながる一方で、期待の作り方を難しくします。アイデアとして受け取られた広告は、クリックされた後に「宣伝だった」とわかった瞬間に離脱されることがあります。ピンで見せた世界と、着地ページで見せるものを一致させておく必要があります。
この一致は、単に商品が同じという意味ではありません。ピンで伝えた雰囲気や使い方が、着地ページでも続いているかどうかです。媒体の特性で得たクリックを、着地ページの作りで失うのが最もよくある取りこぼしです。
日本での位置づけと利用者像
Pinterestの広告サービスであるPinterestアドは、2022年6月に日本で利用可能になりました。それ以前はベータテストが行われており、参加した広告主や代理店から評価を得たうえでの正式提供という経緯です。国内での歴史はまだ浅い部類に入ります。
日本における月間利用者数は約870万人と公表されています(2020年12月ニールセン調べ)。男女比は女性57%、男性43%で、世代別ではミレニアル世代が30%、Z世代が23%を占め、35%が子供のいる親という構成です。女性に偏った媒体だと思われがちですが、実際には男性も四割を超えます。
この規模をどう捉えるかは、商材の対象範囲によって変わります。全国的に展開する商材であれば十分な母数ですが、特定地域に限定したサービスでは、実際に届く人数はさらに絞られます。地域を限定する運用では、想定より配信量が伸びないことを前提に計画を立ててください。
全世界では毎月4億人以上が利用しており、ファッション、ビューティー、レシピ、インテリアのヒントなど、日常生活や将来の計画に役立つアイデアを探す用途で使われています。日本のPinterest利用者の5人に2人が、何かを購入する際にPinterestでアイデアを探していると回答しているとされます。
子供のいる親が35%を占めるという構成は、商材によっては見逃せない情報です。家庭内での購買決定に関わる層が多いということは、住まい、食、子供用品、教育といった領域で接点が生まれやすいことを意味します。単身者向けの商材とは、期待できる成果の出方が変わります。
年代構成も設計に影響します。ミレニアル世代とZ世代で半数を超える一方、それ以外の層も半数近くいます。若年層向けの媒体と決めつけると、実際に反応する層を取りこぼします。属性の思い込みで配信対象を絞り込みすぎないことが、初期設定での注意点です。
利用者規模だけを見れば、他の主要SNSと比べて小さい部類です。ここで重要なのは、規模の比較ではなく役割の比較です。同じ人数に何度も触れる面ではなく、他の面では捉えにくい状態の人に触れる面として評価します。
検索の97%が非指名という前提
Pinterestは、同プラットフォームにおける検索の97%が非ブランド指名検索であると公表しています。この数字は、運用設計のあらゆる判断に影響します。指名検索がほぼ発生していないということは、ブランド名で刈り取る発想が通用しないということです。
実務への影響は三つあります。ひとつは、キーワードの考え方です。自社名や商品名ではなく、利用者が使う一般的な言葉で発想する必要があります。用途、シーン、季節、素材、色といった、商品を知らない人が使う語が中心になります。
ふたつめは、クリエイティブの作り方です。ブランドを知らない人に向けるため、ロゴや商品名を大きく出しても意味がありません。伝えるべきは「何のブランドか」ではなく「どんな暮らしや場面に使えるか」です。この転換ができないと、反応が伸びません。
キーワードの発想を変えるには、社内の言葉から離れる作業が必要です。商品開発の現場では正式名称や型番で会話しますが、探している人はその言葉を知りません。カスタマーサポートに届く問い合わせの文面や、レビューに書かれた表現のほうが、実際に検索される言葉に近くなります。
集めた言葉は、用途とシーンで分類します。同じ商品でも、季節、場所、組み合わせる相手によって探し方は変わります。一つの商品に対して複数の入口を用意することが、非指名の需要を拾う基本の形です。
みっつめは、評価のタイミングです。決めていない人が決めるまでには時間がかかります。クリックした当日に購入が発生することを前提にすると、成果は過小評価されます。検討期間を織り込んだ観測窓を設定しなければ、正しい判断はできません。
非指名の検索需要をどう拾うかという発想自体は、他のプラットフォームでも応用が効きます。プロフィールやキャプションを検索に合わせて整える考え方は共通するので、横断して整理しておくと無駄が減ります。
ブランドを知らない人に何を伝えるか
ブランド名が効かない以上、素材で伝えるべきは提供価値そのものになります。どんな暮らしが実現するのか、どんな場面で使えるのか、どんな問題が解決するのか。これらが画像の中で伝わることが条件です。
逆に言えば、言葉で説明しないと価値が伝わらない商材は、この媒体では苦戦します。画像一枚で用途が想像できるかどうかが、相性を測る簡単な基準になります。社内で素材を数点並べて、商品名を隠した状態で用途が伝わるかを確認すると判断がつきます。
MetaやTikTokとの役割分担
Pinterestを既存の配信に加えるとき、どの役割を担わせるかを決めておかないと、既存の面と食い合います。媒体ごとの性質を整理すると、役割の重なりが見えてきます。
| 媒体 | 利用者の状態 | 担わせる役割 |
|---|---|---|
| 買うものもブランドも決めていない | 比較検討に入る前の需要を拾う | |
| Meta(Facebook・Instagram) | 関心はあるが能動的には探していない | 関心を掘り起こし、検討へ押し出す |
| TikTok | 発見から検索へ流れる途中 | 話題をつくり、指名検索を生む |
| 検索連動型広告 | 探すものが決まっている | 決まった需要を確実に刈り取る |
この表で見ると、Pinterestが担う位置は最も上流です。上流の面は、成果が出るまでの距離が長い代わりに、競合が少なく単価も安定しやすい傾向があります。下流の面と同じ評価軸で比べれば必ず負けるため、評価軸を分けることが前提になります。
既存配信との食い合いを避けるには、予算の出どころも分けておきます。刈り取り用の予算から出すと、短期のCPAで評価されて早期に打ち切られます。認知や需要創出の枠から出すほうが、役割と評価が一致します。
フォーマットの選び方については、他媒体での使い分けの考え方が参考になります。静止画・動画・カルーセルの役割は共通する部分が多いため、既存の知見をそのまま応用できます。
向いている企業と扱えない領域
向き不向きははっきり分かれます。Pinterestで探されているのは、暮らしや計画に関わるアイデアです。視覚的に違いが伝わり、選ぶ楽しさがある商材ほど相性が良くなります。
| 相性 | 商材・業種の例 | 理由 |
|---|---|---|
| 向いている | インテリア、ファッション、ビューティー、食品・レシピ、ウェディング | 視覚で選ばれ、検討期間があり、保存されやすい |
| 条件付きで向く | 住宅・リフォーム、旅行、教育サービス | 検討が長い分、初期接触の価値が高い |
| 向きにくい | 緊急性の高いサービス、法人向けの専門ツール | アイデア探しの文脈と接点が乏しい |
| 配信不可・要確認 | 減量関連、政治キャンペーン | 広告ポリシーで扱いが制限されている |
ポリシー面は事前に確認が必要です。Pinterestは、反ワクチン関連コンテンツをブロックする健康に関する誤情報ポリシーや、政治キャンペーンや減量に関する広告を禁止するポリシーを策定してきたと説明しています。他媒体で配信できている表現が、この媒体では通らないことがあります。
住宅やリフォームのような検討の長い商材は、条件付きで向く側に入ります。実際、日本での正式提供に先立つベータテストでは、中古・リノベーション住宅のプラットフォームを運営する企業が、物件の内見・問い合わせ獲得を目的としたキャンペーンを実施し、コストを抑えながらリーチを大きく伸ばしたとコメントしています。
逆に、緊急性が高く即決される商材は向きません。今すぐ必要なものを探している人は、アイデアを集める場所には来ません。修理や緊急対応のようなサービスは、検索連動型の広告に予算を寄せるほうが合理的です。検討の余地がない商材に、検討前の面を当てても噛み合いません。
BtoBの専門的なツールやサービスは、基本的に向きにくい側です。ただし、オフィス環境や働き方に関わる商材のように、視覚で伝わる要素がある場合は例外もあります。業種で一律に切らず、視覚性と検討期間の二軸で判断してください。
商品カタログ連携で運用の負荷が変わる
商品点数が多い事業者にとって、カタログ連携の有無は運用負荷を大きく左右します。個別に広告を作る方式では、点数が増えるほど制作と管理の手間が積み上がります。カタログを連携すれば、商品データから自動で配信できるため、運用の中心は素材制作から商品データの整備に移ります。
連携するかどうかの判断は、商品点数と更新頻度で決まります。点数が数十程度で入れ替わりも少ないなら、個別に作ったほうが表現の自由度が高く、結果も出やすくなります。点数が数百を超え、季節ごとに入れ替わる事業では、連携なしの運用は早晩破綻します。
Pinterestは、日本での広告提供開始と同時にShopifyとのパートナーシップを開始したことも公表しています。Shopifyのマーチャントは、Pinterest上でプロダクトピンを簡単に作成でき、オーガニック検索やPinterestアドを通じて利用者をECサイトに誘導できるとされています。すでにShopifyを使っている企業は、着手のハードルが一段低い状態にあります。
連携を前提にする場合、成果を左右するのは商品データの質です。商品名が型番だけになっていたり、説明文が空欄だったり、画像が背景ごと切り抜かれていなかったりすると、そのまま配信面の品質に反映されます。広告の設定を詰める前に、データの整備状況を確認してください。
画像の質も、そのまま成果に響きます。ECサイトの一覧用に用意した小さなサムネイルをそのまま流用すると、縦長のフィードでは粗く見えます。カタログ連携を使う場合でも、配信用の画像を別に用意できる仕組みがあるかは確認しておきたい点です。
在庫情報の反映も運用上の論点になります。売り切れた商品が配信され続ければ、クリックした人を落胆させ、費用も無駄になります。データの更新頻度が実際の在庫の動きに追いついているかを、配信開始前に確かめてください。
カテゴリの分類も重要です。非指名検索が中心の媒体では、商品がどのカテゴリに属するかが配信先の適切さを決めます。社内の管理上の分類と、利用者が探すときの分類がずれている場合は、配信用に別の分類を用意する判断もあり得ます。
ピンは広告らしさを抜くところから作る
Pinterest上で反応が良いのは、フィードの中で浮かない素材です。周囲に並ぶのは、利用者が保存したアイデアの画像です。そこに広告然としたバナーが混ざると、視線は素通りします。
色数や明るさも、フィード上での見え方を左右します。全体に暗い素材は、明るい画像が並ぶ中に埋もれます。逆に、彩度を上げすぎた素材は不自然に浮きます。周囲と調和しつつ、視線が止まる程度の差をつけるのが狙いどころです。
実務では、商品単体の切り抜き画像より、使用している場面が写っている画像のほうが機能します。インテリアであれば部屋全体の中での見え方、食品であれば食卓に並んだ状態、衣類であれば着用した全体像です。「何であるか」より「どう使えるか」が伝わる構図を優先します。
文字の扱いも他媒体と異なります。画面いっぱいに文字を敷くと、アイデアの画像として保存されにくくなります。文字を入れる場合も、画像の一部として成立する範囲にとどめるほうが、保存や再訪につながります。
縦長の比率が基本である点も押さえておきます。フィードは縦に流れるため、横長の素材は占有面積が小さく、視認されにくくなります。既存の広告素材を流用する場合でも、比率の調整だけは必ず行ってください。
素材の本数は、切り口を変えて複数用意します。同じ商品でも、季節、用途、組み合わせの提案など、探し方が違えば響く素材も変わります。非指名検索が中心である以上、入口の数だけ素材の切り口が必要になります。
素材の使い回しで供給を安定させる
ゼロから撮り下ろすだけでは、必要な本数に届きません。既存の商品撮影、店舗やショールームの写真、顧客が投稿した画像の二次利用など、手元にある素材を洗い出すところから始めます。トリミングと比率の調整だけで使えるものは少なくありません。
ただし、顧客の投稿を使う場合は許諾の確認が前提です。広告として使う範囲を明示しないまま流用すると、後からトラブルになります。許諾の取得は、素材の量を増やす前に仕組みとして整えておくべき部分です。
保存と再訪を前提にした指標の設計
Pinterestの評価で最も多い失敗は、クリック直後のコンバージョンだけを見ることです。この媒体の利用者は、気に入ったピンを保存して後から見返します。保存された時点では何も起きませんが、購入の意思が固まった段階で戻ってきます。
したがって、観測窓は長めに取ります。クリックから購入までの日数が長い商材であれば、その期間をカバーする計測設定が必要です。窓が短いままだと、成果が他のチャネルに帰属し、Pinterestは費用だけを計上した面に見えます。計測の窓を変えるだけで評価が反転することは珍しくありません。
観測窓を長く取ることには副作用もあります。他媒体との重複計上が起きやすくなり、各媒体の貢献を足し合わせると実際の成果を超えることがあります。媒体ごとの数値を合計して判断しないこと、全体の成果を別に持っておくことが、この副作用への対処になります。
中間指標としては、保存の数と、サイト訪問後の回遊の深さを見ます。保存が多いピンは、その時点で購入に至らなくても関心を得ています。どの素材が保存されているかがわかれば、次の制作の方向も決まります。
指名検索の変化も補助指標になります。非指名で接触した人が、後から社名や商品名で検索する動きが出れば、上流の面として機能している証拠です。広告管理画面の外側にも影響が出る前提で、評価の材料を集めてください。
評価で見る指標の組み立て
- 入口:表示回数とクリック率で、素材が関心と合っているかを見る
- 関心:保存の数で、その場で行動しない層の反応を捉える
- 遷移後:着地ページでの回遊と滞在で、期待とのずれを確認する
- 成果:検討期間に合わせた観測窓で、購入や問い合わせを計上する
- 波及:指名検索や直接流入の変化で、上流としての効果を補足する
季節性を読み込んだ配信計画を立てる
Pinterestの利用には、明確な季節の波があります。住まいの模様替え、新生活の準備、季節の行事、贈り物の検討など、暦に沿って探されるテーマが移り変わります。この波に合わせて配信を設計すると、同じ予算でも成果が変わります。
重要なのは、需要の発生より早く出すことです。利用者は計画のために探しているため、実際の行事よりかなり前から情報を集め始めます。行事の直前に配信を始めても、すでに検討を終えた人が多くなります。該当する時期の一か月から二か月前に配信を立ち上げる前提で計画してください。
季節の波は、素材の作り置きとも関係します。配信の直前に制作を始めると、狙った時期に間に合いません。撮影の計画を年間で組み、季節ごとの素材を前倒しで用意しておくと、配信の立ち上げが遅れなくなります。
年間の計画を作る際は、自社の繁忙期ではなく、利用者が探し始める時期を基準にします。出荷や販売の山と、検討の山は別のものです。この二つを混同すると、配信のタイミングが常に後手に回ります。
過去の自社データがない段階では、業界の一般的な検討期間から逆算します。数か月分の配信を経れば、自社の商材でいつ反応が立ち上がるかが見えてきます。二年目以降は、そのデータをもとに計画の精度を上げられます。
着地先は商品一覧が効く場合がある
遷移先の設計では、単品のランディングページに送るのが常に正解とは限りません。買うものを決めていない人にとって、選択肢が一つしかないページは行き止まりになります。複数の選択肢を見比べられる一覧ページのほうが、検討を進めやすいことがあります。
この判断は、商材の性質でも変わります。単価が高く比較が慎重に行われる商材では、いきなり一商品に絞るより選択肢を見せたほうが信頼されます。逆に、衝動的に選ばれる商材では、迷わせずに一つを見せ切るほうが機能します。比較させるべきか、決めさせるべきかを先に決めてから着地先を選んでください。
判断の基準は、クリックしたピンがどの程度具体的かです。特定の商品が明確に写っているピンからは、その商品の詳細ページへ送るのが自然です。一方、使用シーンや雰囲気を伝えるピンからは、その世界観に合う商品が並ぶ一覧へ送るほうが噛み合います。
一覧に送る場合は、並び順と絞り込みの初期状態を調整します。ピンで見せた文脈と一覧の先頭が一致していないと、来た人は「さっき見たものがない」と感じます。ピンと着地ページの間で文脈を途切れさせないことが、離脱を防ぐ最大の要点です。
着地ページの情報量も調整の余地があります。検討前の層に対して、仕様やスペックを大量に並べても読まれません。まずは全体像と価値が伝わり、必要な人だけが詳細に進める構成のほうが、この流入には合っています。
いずれの場合も、着地ページの表示速度は確認しておきます。画像中心の媒体から来る人は、視覚的な体験を期待しています。読み込みが遅いページは、その期待を裏切ります。特にスマートフォンでの表示は、通信環境によって体感が大きく変わるため、実機での確認を欠かさないでください。
着地後にもう一度検討の材料を探せる導線も用意しておきます。関連する商品、使い方の記事、実例の写真など、その場で決めない人が次に進める先があると、離脱がそのまま終わりになりません。
ターゲティングは絞りすぎないところから始める
非指名検索が中心の媒体では、配信対象を細かく絞り込むと機会を失います。最初から年齢や興味関心を厳しく設定するのではなく、広めに配信して反応の出た層を後から把握するほうが、この媒体の性質に合っています。
キーワードによる配信を使う場合も、候補は多めに入れます。どの語で反応が出るかは、事前の想定と一致しないことが多いためです。配信後にデータを見て、成果の出ていない語を落としていく進め方のほうが、結果的に早く最適化できます。
絞り込みを入れるのは、データが溜まってからです。数週間の配信で成果の傾向が見えた段階で、明らかに反応の薄い条件を外していきます。最初から絞ると、そもそも比較する材料が手に入りません。
興味関心のカテゴリも、自社が属するカテゴリだけに絞らないほうが機能します。インテリアの商材がファッションの文脈で探されることもあれば、食の文脈で見つかることもあります。隣接する領域まで含めて配信し、実データで当たりを確認する順番が有効です。
予算規模と検証期間の決め方
検証の設計は、検討期間から逆算します。購入までに平均して二週間かかる商材であれば、配信期間に加えて二週間の観測期間が必要です。配信を止めた直後に評価すると、後から発生する成果を取りこぼします。
予算は、判断に足るクリック数が集まる水準に設定します。少額で長く回すより、一定量を短期間に集めて素材ごとの差を見るほうが、学べることが多くなります。素材の優劣がつかない量で回し続けるのが、最も無駄の多い進め方です。
期間中に手を入れるかどうかも、あらかじめ決めておきます。素材の差が明確に出た時点で負けている素材を止めるのは妥当ですが、配信設定そのものを頻繁に変えると、何が効いたのか判断できなくなります。触ってよいのは素材の入れ替えまで、と線を引いておくと検証が濁りません。
既存の配信に影響を与えないよう、キャンペーンは独立させます。他媒体の予算を削って原資にすると、削った側の学習が乱れ、比較そのものが成立しなくなります。配信設定を触る順番の原則は、媒体をまたいでも共通します。
社内で説明するときの論点
新しい媒体の追加は、社内で必ず「既存の媒体で足りないのか」と問われます。この問いには、足りないのは量ではなく到達している層の状態だと答えるのが正確です。既存の配信で捉えているのは関心が顕在化した層であり、その手前の層には届いていません。
説明の材料としては、検索の97%が非指名であるという公表値が使えます。ブランドを決めていない人が集まる場所であることが、媒体の側から明示されているためです。自社の推測ではなく、媒体の公表値を根拠にすると議論が短く済みます。
あわせて、評価の期間についても事前に合意を取ります。検討期間の長い層に触れる以上、一か月で判断するのは早すぎます。何か月で何を見て判断するのかを先に決めておけば、途中で打ち切られる事態を避けられます。
予算の規模も、最初から大きくする必要はありません。既存の予算の一部ではなく、少額でも独立した枠として確保することのほうが重要です。枠が独立していないと、既存媒体の数値が悪化したときに真っ先に削られます。
運用を続ける体制をどう組むか
Pinterestの運用で継続的に必要になるのは、素材の供給です。切り口を変えた素材を定期的に投入できないと、同じピンが回り続けて反応が落ちます。制作のリソースが確保できるかが、続けられるかどうかを分けます。
既存の撮影素材を活用できる場合は、負荷が大きく下がります。商品撮影やシーン撮影を定期的に行っている企業であれば、その素材をピン用に切り出すだけで供給が回ります。逆に、撮影の機会が年に数回しかない企業では、素材の枯渇が早く訪れます。
担当者の時間配分も現実的な問題です。既存媒体の運用で手一杯の状態に媒体を一つ足せば、どこかが手薄になります。新しい媒体を追加するときは、何をやめるか、あるいは何の頻度を落とすかもセットで決めてください。足すだけで回る前提に立つと、既存の運用品質が静かに下がります。
社内で回しきれない場合は、外部の力を借りる判断になります。その際、配信の運用だけでなく素材制作まで含めて依頼できるかを確認してください。運用だけを外注して素材は社内、という分担は、供給が止まった時点で機能しなくなります。
費用の妥当性は、運用代行全体の相場感を持って判断します。媒体を一つ追加する際の費用が、既存の契約にどう積み上がるのかを事前に確認しておくと、想定外の増額を避けられます。
オーガニックのピンも並行して育てる
Pinterestには、広告以外に通常のピンとして投稿する運用もあります。広告だけを出して自社のアカウントが空の状態だと、興味を持った人がアカウントを訪れたときに何もありません。ボードを整理して、テーマごとにピンがまとまっている状態を作っておくと、広告の受け皿として機能します。
アカウントの整備は、広告を始める前に一度だけ手をかければ済む作業です。ボードを数本作り、それぞれに十数枚のピンを入れておくだけでも、訪れた人の印象は変わります。継続的な投稿が難しくても、最低限の体裁を整えておく価値はあります。
オーガニックのピンは、保存されることで露出が継続します。広告は配信を止めれば露出も止まりますが、保存されたピンは残り続けます。広告で反応の良かった素材を通常のピンとしても投稿しておくと、配信終了後も接点が残ります。
投稿の頻度は、毎日である必要はありません。まとまった数を月に一度投入する形でも、保存されて蓄積していく性質があるため成立します。継続できる頻度を選ぶことのほうが、頻度の高さより重要です。
ボードの構成は、社内の商品分類ではなく利用者の探し方に合わせます。季節、用途、部屋の種類、悩みの種類といった切り口でまとめると、非指名の検索から見つけてもらいやすくなります。広告のキーワード設計とボードの構成は、同じ発想で組むと効率が上がります。
まとめ:下流の物差しで上流の面を測らない
この媒体を扱うときに必要なのは、特別な運用技術ではありません。相手の状態に合わせて、伝えることと測ることを変えるだけです。既存の運用の型をそのまま持ち込まないという一点が、うまくいくかどうかを分けます。
Pinterest広告は、買うものを決めていない層に触れる面です。検索の97%が非指名であるという前提を踏まえれば、刈り取り用の指標で評価するのが不適切であることは明らかです。役割を決め、その役割に合う指標で測ることが、この媒体を使いこなす条件です。
- ブランド名ではなく、用途やシーンの言葉で発想して素材を作る
- 保存と再訪を前提に、検討期間をカバーする観測窓を設定する
- 予算は刈り取り枠ではなく、需要創出の枠から独立させて確保する
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自社の商材がPinterestに向くかどうかは、視覚で違いが伝わるか、検討に時間がかかるか、素材を継続的に供給できるかの三点でおおむね判断できます。ただし、既存の配信とどう役割を分けるかは、アカウントの状態を見ないと決められません。
既存の配信で取りこぼしている層があるかどうかは、いまの流入がどの段階の人で構成されているかを見れば見当がつきます。指名検索や再訪からの成果が大半を占めているなら、新規の入口が細っている可能性があります。
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